食品のリスクをゼロにはできない〜「食のリスク学」を読んで

食のリスク学

食の安全、あるいはリスク。
フードテックが注目を集める中、これらをどう考えるかは、ますます重要になってきています。

中西準子さんの著書「食のリスク学 氾濫する『安全・安心』をよみとく視点」は、2010年に出されたもので、この記事を書いている今ですでに10年を経ていますが、食の安全とリスクを考える際に必要な視点を提供してくれます。逆に言えば、今でもこれが通用するほど、いい加減な安全神話やリスク管理がまかり通っているということでもあります。

中西さんのことを知ったのは、20代の頃。
愛読していた雑誌「クロワッサン」に、水質問題についてのインタビュー記事が何度か紹介されていたことからでした。

ほぼ同じ内容の音声配信はこちらでお聴きいただけます。

目次
1 食の安全は、食のリスクから捉えることで何が問題かが見えてくる
2 さまざまな食の話題についての、中西さんの考え方の軸
リスク管理について
フードファディズムについて
さまざまな論点について


1 食の安全は、食のリスクから捉えることで何が問題かが見えてくる


食のリスクはゼロにはできない。
そこから出発し、食の安全は、食のリスクから捉えて定量化することで初めて、何が問題で、どうすればいいかが見えてくる、と中西さんは言います。

あるリスクを無くそうとすると、別のリスクが浮上する「リスクトレードオフ」の問題。
食べ物が健康や病気に与える影響を過大に評価したり信奉したりする「フードファディズム」の問題(その分野の第一人者高橋久仁子さんとの対談)。
また、中国の餃子事件、バイオ燃料、有機農業、食料自給率など、食の問題の論争点について個々に取り上げてもいます。


2 さまざまな食の話題についての、中西さんの考え方の軸



<リスク管理について>

リスクを削減する行為をとる場合には、リスクトレードオフについて考慮し、両方のリスクが最小になる管理をすることが必要
危険の度合いは同じでも、最初に厳しい対策が必要で、情報が多くなってリスクが低いことがわかってくれば、対策は緩和されなければならないことを理解する必要がある。
ある対策を取ったときにどのくらいリスクが減るかを評価すると同時に、どのくらいコストがかかるかも考えなければならない

といったことは、食のリスクのみでなく、今のコロナ対策についても応用できる考え方のように感じました。

食のリスクについていえば、
食品のリスクはゼロであるべきだという固定的なイデオロギーが強すぎて、本当のリスクを伝えることができない。
に、ハッとさせられます。

<フードファディズムについて>

「低温殺菌牛乳でなければ」という声への疑問、アミノ酸を飲めば痩せるという思い違い、脂肪エネルギー比率が52%で「バランス栄養食」?など、さまざまな話題について、高橋さんとの対談が繰り広げられます。

以前、高橋さんの講演を聞いたことがありますが、この方もまた確かな軸を持って素晴らしい研究をされている方という印象を受けました。

「今の健康願望は、何かをしたいから健康でいたいという本来の健康願望ではなく、他人との比較において、若くみられたいなどという奇妙な競争心にすり替わっているために、安っぽい情報に踊らされる」、「栄養学の中での議論の変化が、たくさん売ろうという宣伝に反映されてしまう」、などの指摘は、心に止めておきたいと思います。

 


<さまざまな論点について>

安全安心のために国産のものを食べようというのはおかしい。
食糧危機が盛んに叫ばれ、自給率をあげる必要性が説かれる理由の一つは、農業政策の失敗を隠すため?
バイオ燃料は環境のためではない。
遺伝子組み換えについては、少しずつ実験しながら考える「アダプティブ・マネージメント」の考え方が必要なのでは?
市民運動は最初は正しいが、一つのスローガンをずっと言い続けなければいけないので、時代が変わると却って間違ってしまいがち。

など、非常におもしろく読みました。

食の安全ということについては、さまざまな情報が飛び交います。
食の安全、あるいはその逆のリスクについての考え方の軸を持つことが大切。
この本は、そんな考え方を学ぶのに良い一冊。
ぜひ、多くの人に読んでもらいたいです。

オンライン読書会を毎月開催しています。最新予定はこちらからご覧いただけます。
https://www.reservestock.jp/page/consecutive_events/2001

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

著書14冊。メディア出演多数。

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