食の未来〜「フードテック革命」の衝撃

フードテック革命

少し前から、「フードテック革命 世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義」という本を読んでいます。
2020年夏に出版されたもの。

食産業に関わる人たちが中心ターゲットとなるであろう本ですが、私たちの食のあり方がどう変わっていくのか、その流れを概観するのには、今現在最適な本なのではないかと思います。

ほぼ同じ内容の音声配信はこちらでお聴きいただけます。

目次
1 情報が大量で驚きます
2 驚きのフードテックの数々
3 日本企業はiPhone前夜のガラケー状況?
4 私たちの日常の食はどう変わっていくのでしょうか?


1 情報が大量で驚きます


フードテック革命

少し前から読んでいる、と書きました。
この本には、情報が多すぎて、ざっと読むだけだと頭に入らないため、概読はしたものの、たまに開いて読むことをしているから。
そのくらい、世界ではフードテックが熱くなっているということなのでしょう。

フードテックと聞くと、例えば調理ロボットや、代替肉のようなものを想像する人も多いと思うのですが、それはごく一部のものにすぎないのが、この本を読むとよくわかります。

取り上げているテーマだけでも、代替プロテイン、食の領域のGAFA、食の超パーソナライゼーション、外食産業のアップデート、食品リテールの進化などなど。
そのそれぞれについて、今その分野で注目されている取り組み、中心となる企業やそのサービスの紹介、今後のビジネス展開の可能性などについてが記されているのです。


2 驚きのフードテックの数々


あるイギリスのスタートアップでは、DNA鑑定の結果が1時間後に出て、そのデータが組み込まれたリストバンドを商品バーコードにかざすと、DNAにマッチしていれば緑、違えば赤になることで、どれを買えば良いかが瞬時にわかるようになるシステムを作ったと言います。

アメリカのIOT低温調理器では、例えばベーコンを焼くメニューが毎週土曜日に格段に多く利用されることがわかると言います。
家電によって蓄積されるデータがマーケティングに活かされるようになっているというのです。

サムソンでは、冷蔵庫の中の食材をセンシング(!)して、おすすめレシピを提案するために、レシピ自動生成アプリのスタートアップを買収。

調理に失敗がないように、加熱温度を自動調整してくれるフライパンは、3回もそのレシピで料理すれば4回目には普通のフライパンでもその料理が作れるようになるという、料理教室的な役割を果たしてくれる、、料理を教えてくれるフライパンなんていうものもすでに存在しています。


3 日本企業は、iPhone前夜のガラケー状況?


この本が書かれたのは、日本企業の中に、フードテックの分野でのメジャーな担い手が見られないという危機感からなのだそうです。

サイエンスと食の融合、フードビジネスとしてのプラットフォームの勃興、そしてライススタイルの中での「顧客体験」に価値創造が移りつつ ある、日本はその転換についていかなければならないと著者らは言います。

例えば欧米の企業は、「オーブン単体だけの機能ではもはや差別化は測れない」として、新しい価値を求めて異分野の企業との連携を進めています。

また、「フルスタック」(川上から川下まで)がキーワードになっており、おすすめ料理の提案、レシピの提供、ネットでの買い物、デリバリー、手軽に調理できるIOT家電までを、複数の企業が共同することによって実現しようとする動きが加速しています。


4 私たちの日常の食は、どう変わっていくのでしょうか?


フードテックで、私たちの日常の食はどう変わっていくのでしょうか?

調理が便利になったり、レシピを考える手間が省けたり、自分にあった栄養を含む食材を勧めてもらえたり、買い物はボタン一つで(すでにできていますが)できるようになったり、多くのことが「便利」になっていくのだと思います。

それでも、ただ機械に任せて栄養的にも配慮された美味しい料理が出てくれば最高じゃない?と思う人がいる一方で、料理をする体験そのものに喜びを覚える人もいるし、どういう工程で作られた食材かを気にする人がいるなど、そのニーズは様々なところが食の面白いところでもあります。

著者らも書いているように、フードテックの目指すところは一つではなく、さまざまな方向性が考えられるはず。
巻末にある12のFuture Food Visionのどこに親和性を感じるかは人それぞれだと思います。
人それぞれの考え方やニーズを置き去りにしないフードテックが進んでいくことを期待しています。

Future Food Vision

そのためにも、私たちが食の世界の流れを掴んでおくのは大切なのではないでしょうか。
食業界の人はもちろん、食に関心がある人には一読をお勧めします。

 

 

1 個のコメント

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    ABOUTこの記事をかいた人

    サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
    東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

    食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
    料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

    料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

    著書14冊。メディア出演多数。

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