遺伝子組み換えに関する賛否両論〜映画「FOOD EVOLUTION」をみて

野菜

先日、映画「FOOD EVOLUTION」のオンライン上映会に参加しました。

遺伝子組換え作物に関する声を、賛成、反対問わず幅広く拾った映画で、とても興味深く見入ってしまいました。

音声でもお伝えしています。こちらからお聴きください。

目次
1 この映画の中で取り上げられる、さまざまな「考える材料」
①ハワイのパパイヤ産業を救った事例
②ウガンダのバナナと人々の飢え
③有機栽培が地球を救うという声
④ヨーロッパの反GMO運動を牽引してきた環境活動家が謝罪、の衝撃
2 透明性のある科学的データと対話が必要


1 この映画の中で取り上げられる、さまざまな「考える材料」


遺伝子組み換えを取り上げた映画といえば、ほとんどのものが、反対の立場から作られてきた「結論ありき」の映画だったように思います。

この映画は、反対派だけではなく賛成派の声も取り上げ、結論を提示するのではなく、考える材料を与えてくれるように思います。


①ハワイのパパイヤ産業を救った事例

ハワイで遺伝子組換え作物を排除する法案が一度通り、でもその後にパパイヤは除外されると変更されるに至る喧々諤々の状況もレポートされます。
パパイヤが除外されることになったのは、ハワイのパパイヤが病気でほぼ全滅した時に、分子生物学者のデニス・ゴンザルベス博士が開発した、その病気に強いように遺伝子組み換えされたレインボーパパイヤが産業を救ったからなのだそうです。


②ウガンダのバナナと人々の飢え

ウガンダでバナナが壊滅的な打撃を受け、「家族が食べるものがなくなってしまった」と涙する女性。
実はその病気に対抗できる遺伝子組み換えバナナがすでにEMMA NALUYIMA MUGERWA博士らの手によって開発されているものの、「遺伝子組み換えは悪である」という世界的な風潮の中、ウガンダでは食品として認可されず、栽培ができないのだそうです。
「この木を分けて欲しい」と懇願する女性。でもそれは叶わないのです。


③有機栽培が地球を救うという声
地球の持続可能性のためには、有機栽培を広めていかなければという声も大きいです。
反GMO活動家として有名なジェフリー・スミス氏、農業経済学者のチャールズ・ベンブルック氏、「アメリカを変えた母」と称されるゼン・ハニーカットさん、インドの哲学者で環境活動家でもあるヴァンダナ・シヴァさんなども登場します。


④ヨーロッパの反GMO運動を牽引してきた環境活動家が謝罪、の衝撃

英国の作家で環境保護活動家マーク・ライナス氏が、「世界の飢餓や環境を保護するためには遺伝子組み替え技術は欠かせないもの」だとし、自身が行ってきた活動について「私は科学を発見した」として、オックスフォード農業会議で公式に謝罪したことは、多くの人に衝撃を与えたと言います。これもこの映画の中で紹介されています。


2 透明性のある科学的データの蓄積と対話が必要


ナレーションが、実は賛成派も反対派も、目指すゴールは同じである、とするところにハッとさせられました。

持続可能な社会であってほしいこと、環境をこれ以上破壊しないこと、飢餓のない社会であってほしいこと、それを望まない人はいないはずです。
感情論に終始するのではなく、科学的データに基づいた透明性のある実験を繰り返していくことで、安全性とリスクをどう判断するのかという議論を積み重ねていく必要を強く感じさせられました。

遺伝子組み換えの不安を訴える側は、総じてデータや科学的根拠を出そうとする動きは少ないように感じられました。
また賛成派がどんなデータを出しても「どうせ捏造」という先入観を持っているために、扉は閉じられているという感じ。

「透明性のある」あるいは反対派も巻き込んでの実験体制を作っていかないと、いつまでも議論は平行線を辿り、その間にも飢餓に苦しむ人は増えていくのではないかと思ってしまいました。

有機栽培だから必ずしも全て良いとは言えないとも言われています。
収量が少なくなることをどう解決するのか、現実に飢えているウガンダの女性のような人をどう救おうというのか。
完熟堆肥でないものを使ってしまうことによる危険性なども指摘されています。

この映画はただ見るだけではなく、その後に賛成派、反対派双方の識者をゲストに呼び、みんなでディベートをしたらおもしろいと感じました。
識者がいるということと、なんとなく感想を述べ合うのではなくディベートというところがミソと思っています。
何が問題なのか、どこがわからないのか、どこまでは共有できるのか。
そして、わからないこと、行き詰まったことが出てきたときに、「それは今こういう状況です」と解説してくれる人がいる状況があるとベストと思うからです。そうでないと、そこで議論は詰んでしまいます。

「一つの意見だけを信頼せず、専門家が同意したことを確認するように」という科学者の声が心に残りました。

この映画、ぜひ多くの人に見てもらいたい!

FOOD EVOLUTION 公式ページ(英語)はこちら
(予告編は日本語字幕入り)
https://www.foodevolutionmovie.com/

この映画のファンページはこちら(日本語)
https://foodevolution-fan.jp/

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

著書14冊。メディア出演多数。

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