2004年、イギリスの食品規格庁が、ひじきには無機ヒ素が多く含まれ、無機ヒ素には発がん性が認められるので摂取に関して注意を勧告しました。
その件について、メルマガ読者の方からこんなご質問をいただきました。
どれくらいの砒素があり、
しっかりお答えするため、長文です。
もし概要だけ知りたいという方は、最後の「まとめ」をご覧ください。
ほぼ同じ内容の音声配信はこちらでお聴きいただけます。
目次
1 無機ヒ素を摂取するとどうなる?
2 ひじきに含まれる無機ヒ素の量は?
3 健康被害の報告はあるの?
4 無機ヒ素をさらに減らすには?
5 無機ヒ素を減らすことで、他の栄養はどうなる?
6 まとめ
目次
1 無機ヒ素を摂取するとどうなる?
農水省のHPによれば、
無機ヒ素が一度に、または短い期間に大量に体の中に入った場合は、発熱、下痢、嘔吐、興奮、脱毛などの症状があらわれると報告されています。また、無機ヒ素が長期間にわたって、継続的かつ大量に体の中に入った場合には、皮膚組織の変化やがんの発生などの悪影響があると報告されています。
(https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_as/qa.html)
「大量に」というのがどの程度なのかが問題ですよね。
2 ひじきに含まれる無機ヒ素の量は?
以下は、東京都福祉保健局のHPにあったものです。
実際に売られているひじきで計測したところ、有機&無機ヒ素を合わせて1キログラム当たり34~117ミリグラムのヒ素が検出されたそうです。
WHOが定めた無機ヒ素の耐用週間摂取量、15マイクロg/kg体重/週に照らして、体重50kgの人の場合、毎日4.7gずつのひじきを摂取し続けない限りは問題ないとしています。
4.7gというと少ないように思うかもしれませんが、戻すと8倍程度になるので、37.6gになります。
ネット上のレシピをざっと見ると、ひじきの煮物で1人分に使うのが、乾燥で4g~10g程度な感じです。
2日に1回は継続的にひじきの煮物を食べるとすると(そんなにひじきの煮物を常食する人はあまりいないと思いますが)、基準をこえるかもしれないといった程度。
ちなみに、日本人の乾燥ひじきの平均摂取量は1日あたり0.6gだそうです。
(東京都福祉保健局HP https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/anzen_info/hijiki.html)
3 健康被害の報告はあるの?
食品安全委員会によれば、
ヒジキには、無機ヒ素が他の食品に比べ高濃度で含まれていることが文献などで報告されていますが、我が国の食文化に基づく通常の摂取の範囲では、ヒジキを食べてヒ素中毒を起こすなど健康に悪影響が生じたとの報告はありません。
(中略)通常の調理方法に基づき料理されたヒジキを適度に食べる場合においては、ヒジキに含まれるヒ素について心配することはないと考えられます。また、ヒジキ等の海藻はミネラルに富む食品であり、バランスよく食品を食べて健康の維持に努めることが重要と考えています。
また、厚労省は以下のように言っています。
ひじきは我が国の伝統的食材として古くから食べられておりますが、これまでにひじきを食べてヒ素中毒を起こすなど健康に悪影響が生じたとの報告はありません。また、ひじきは、食物繊維を豊富に含み、必須ミネラルも含んでいることから、我が国では、ひじきを極端に多く摂取するのではなく、バランスの良い食生活を心がけるよう呼びかけております。
(以上、食品安全委員会HP ヒジキに含有される無機ヒ素について参照 http://www.fsc.go.jp/fsciis/questionAndAnswer/show/mob07009000005)
これを前提にした上で、さらに無機ヒ素を軽減する方法について、調べてみました。
4 無機ヒ素をさらに減らすには?
農水省のHPに詳しいデータがありました。
<業者への通達>
まずは、乾燥ヒジキの加工方法として、海水塩を含む水で、水を替えて複数回煮熟することでヒ素が低減できるということで、これをしっかり行うように業者への通達を出しています。
また、消費者がひじきを水戻しせずに調理したり、戻し水を調理に使ったりしないよう、商品のパッケージにわかりやすく表示するようにも求めています。
<調理の際の注意>
家庭での戻し方についてはこんなデータが。
これを受けて乾燥ヒジキの水戻しでは水温が高い方が早く多くのヒ素が溶出するとしています。
農林水産省の消費者向けリーフレットはこちら
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/g_kenko/busitu/pdf/hijiki02.pdf
5 無機ヒ素を減らすことで、他の栄養はどうなる?
上記のような戻し方をした場合でも、
鉄分は7割以上
カルシウムはほぼ変化なし
食物繊維は8割以上
残るそうです。
参照: 農水省ホームページ
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_as/maff_hijiki.html#1
6 まとめ
1 日本国内で、ひじきの無機ヒ素による健康被害は報告されていない。
2 WHOの摂取量目安に鑑みても、普通に食べている分には健康被害には至らない。
3 家庭では30分以上水戻ししたあと水洗いしてから調理する(もっと丁寧には、そのあとさらに茹でて茹でた水を捨てる)、戻し水は調理に使わない。
4 3のような戻し方をしても、鉄、カルシウム、食物繊維などは残存する。
というところでしょうか。
ひじきは栄養もあるけど、無機ヒ素大丈夫かなと不安に思っている方の不安解消になれば嬉しいです。
<ビデオ講座> ひじき自由自在
https://www.reservestock.jp/stores/article/21439?article_id=27376
サカイ 優佳子
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