「乾物」と「干物」はどう使い分けるのですか?ご質問への回答

乾物か干物か

先日のオンラインの質問会で、「乾物と干物は、どう使い分けるのですか?」というご質問をいただきました。

調べたことをまとめてみました。

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1 昭和8年の「大阪乾物商誌」による「乾物」と「干物」

あれこれ乾物集合

乾物には、たくさんの種類があります

2015年に、国会図書館で文献を調べた時のメモがevernoteに残っていました。

「大阪乾物商誌」(大阪乾物商同業組合出版社、西村徳蔵編、昭和8年)によると、こうなるのだそうです。

干物=なまぐさものを干したもの

乾物=しょうじんものを干したもの

 

シンプルでわかりやすいですね。

さて、時代は下り、どう変わったのでしょうか?

2 昭和52年「乾物食品と食生活の変化」による「乾物」と「干物」

魚の干物

魚の干物(ひもの) 乾物ではないんです

「ザ かんぶつ」というサイトによれば、以下のような文献が残っているそうです。

昭和52年2月4日付「食品新聞」連載
第2回「乾物食品と食生活の変化」(2)藤田留三

乾物とは、食料品を分類した一名詞であるが、たまたま「干物」の文字を用いるものもある。

「乾」と「干」は同じく「かん」と読むが、品種は相異なるのである。

「乾物」食用の植物を乾燥(素乾=すぼし)させた物であり、また「干物」とは魚や貝類を塩をして干したもので、一名「塩干」というものである。

ところが「乾物」と「干物」が混用せられ、世間一般、この両者区別が判然とせず、混同され、また同一視されているが、即ち「乾物」と言えば「植物製品」であり、「干物」とは魚、貝類を塩をして乾燥したものをいうのである。

従って製造方法も用途もまた異なるのである。

*ザ かんぶつ
http://kanbutu.jp/index.php?theme_id=VariousTopics

ここでも、「混同され、同一視されている」ものの、本来は乾物は植物製品、干物は魚介類という分け方としています。

ただ、ここで注目すべきは、「塩をして干した」「一名塩干し」としているところです。

塩をしていないと「干物(カンブツ)」ではないのか?という疑問がわきます。

魚介を、塩をせずに干したものは、ではどうなるのでしょうか?

例えば桜エビのようなもの。

この定義だと、乾物にも干物にも入らないということになってしまいます。

3 現代の「乾物」と「干物」

デジタル大辞泉の定義

デジタル大辞泉には、こう定義されています。

干物(ヒモノ) 魚介類を干した食品

乾物/干物(カンブツ) 野菜・海藻・魚介類などを、保存できるように乾燥した食品。干ししいたけ・干瓢 (かんぴょう) ・昆布・するめ・煮干しなどの類。

この「干物」の定義によれば、例えば一夜干しとか、みりん干しなどは、干物(ヒモノ)として間違いはないでしょう。

でも、ただ単に「魚介類を干した食品」だとすると、桜エビや煮干しなども、ここに含まれると考えることもできてしまいます。

一方で「乾物/干物」では、素材に関わらず、「保存できるように乾燥した食品」としています。

乾物がどういうもので、干物(カンブツ)がどういうものかの区別をしていないのです。

一般的な用語としては、現代ではどちらを使っても間違いはないということになりそうです。

この定義に一つ注文をつければ、単に「保存できるように」にとどまらず、「常温で長期保存できるように」にした方が正確なのでは?と思うのですが、どうでしょうか。

農水省の定義

農水省のホームページをみてみたところ、こうありました。

Q 乾物とはどんな食品?

A 野菜や海藻類、魚介類などの食材を乾燥させて、水分をカラカラになるまで抜き、常温で数カ月以上の長期保存をできるようにした食品

Q 干物も乾物?

A アジなどの魚を干して作る干物も保存食の一種ではありますが、乾物ほど水分を抜いているわけではありません。柔らかさを保ち、おいしく食べられる程度には水分が残っています。冷蔵庫での保存が必要になります。

現代では、素材のいかんに関わらず、干すことで、常温で長期保存ができるものを「かんぶつ」と呼ぶという理解ということになりそうです。

干物を「カンブツ」と読んで同様な範囲のものを指す事になるかは書かれていませんが。

ちなみに、この農水省のホームページには、私が代表理事をつとめる一般社団法人DRYandPEACEによる「美味しい乾物レシピ」が5つ紹介されていますので、ぜひご覧くださいね。

4 椎茸は、乾椎茸?干し椎茸?

乾と干

漢字の意味するものの違いとは?

以前、干し椎茸の卸を中心にする会社の社長さん(当時)から、「干し椎茸は、乾椎茸と書くものです」と教えられたことがあり、しばらくは乾椎茸あるいは乾しいたけと書くようにしていました。

ただ、雑誌社などに提出するレシピで「乾椎茸」と書くと「干ししいたけ」あるいは「干し椎茸」と校正段階で修正されることも多くなり、今は干し椎茸と書くようにしています。

おそらくは、干すの方が漢字の画数が少なく馴染みやすいなどの理由によるものと思われます。

小学館の類語例解辞典によると、どちらも意味するものは「日光や風、火にあてて、ぬれたり湿ったりしているものの水分を取り除く」とされますが、微妙なニュアンスの違いが以下のように説明されています。

「乾かす」は、水分や湿気を取り除くことに重点がおかれており、「干す」は、水分や湿気を取り除くために、風通しのよい場所に出したり、日光や火にあてることに重点がおかれている。「干す」は、「乾す」とも書く。

レイブン買取センターというHPによると、こうあります。

「乾かす」は、水分を取り除くことを目的とし、日光にあてたり、風や火などにあててみたりする他にも、ドライヤーやストーブなど人工的な方法を使っても乾かすと書くことができます
例文買取センターHP参照)

市販の乾椎茸(と今日は書きますね)のほとんどは、熱を加えて乾燥させています。

かつては炭火や焚き火で乾燥させていましたが、今は乾燥機を使うところが多いようです。

熱を加えて乾燥させることで、椎茸の分解酵素が活発になり、旨味成分であるグアニル酸が増えることが理由です。

ある乾物屋さんによれば、多少湿気のある60度以上(上限不明)の温風で乾かすことで初めて、風味を保ちながらしあげることができるのだそうです。

家で椎茸を干した時に、カチカチに硬くなってしまうのは、これができないからなのですね。

保存はできますが、あの独特の風味は、ただ干すだけではなく、(人工的に)熱を加えて乾燥させることが必要なのです。

なので、「乾椎茸」という漢字にこだわるということなのでしょう。

5 まとめ

乾物と干物の違いについて、私はこう考えることにします。

食材から水分を減らすことで、常温で長期保存が可能なものは、食材の種類に関わらず乾物(カンブツ)。

魚介などを乾燥させたもので、常温長期保存が効かないものは、干物(ヒモノ)。

 

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サカイ 優佳子

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事 東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。 食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発。 料理教室を開催、食品メーカーさんのメニュー開発などを手掛けている。 料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。 著書14冊。メディア出演多数。 食に関するメルマガ「サカイ優佳子の 楽しく 美味しく未来を創る」などを発行している。 https://www.reservestock.jp/subscribe/113493

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