大豆加工食品が目指すべき方向性とは?

大豆でできる様々な食品

大豆加工の分野で日本のトップクラスの会社が、東京で期間限定でその製品を使った料理を食べさせるということで、楽しみに出かけてきました。

さて、そのお味とは?

ほぼ同じ内容の音声配信はこちらでお聴きいただけます。

目次
1 肉やチーズなど、動物性食品に変わる植物性タンパク質製品が求められている?
2 こうした動きの背景にあるのは?
3 食べてみました


1 肉やチーズなど動物性食品に変わる植物性タンパク質製品が求められている?


フードテックという言葉が盛んに使われるようになりました。
その中でも新たな「植物性のプロテイン(タンパク質)」というのは一つの分野と認識されています。

お麩や豆など、昔から食べられてきた植物性たんぱく質を含む食品はあるものの、それとは別に、植物性たんぱく質でありながら、肉のような、あるいはチーズや魚介類のような食感や風味を持つ食品の開発が進められてきています。

The GAFAs(The Global Alternative Food Awards)という団体に寄れば、植物性プロテインを開発する企業が、2018年1月の15社から、2019年1月には約100社に一気に増加、さらに2020年6月には約200社へと増加したと言います(出典 :「フードテック革命」日経BP社。世界でなのか、アメリカでなのか不明)。


2 こうした動きの背景にあるのは?


①2050年の世界の人口は90億を突破し100億に近づくという国連の予測から、このまま人々が肉食を続ければ食べものが足りなくなるのではないか?という不安

②食肉にするために家畜を育てることは、環境負荷が非常に高いという事実
例えば牛のゲップによるメタンガスの発生、家畜に与える穀物飼料のために使われる水や土地、穀物そのもの

③動物が、食べられるためにだけ育てられ殺されるというのはひどいのではないか?という動物愛護の考え方

④植物プロテインの方が動物性プロテインより健康に良さそうという感覚

こうしたことから、肉食を少なくしていこうという動きが生まれ、その中で、肉以外の食材でこれを代用できないかという植物性素材による代替という方向性と、肉を培養するという方向性とが模索されてきています。

3 食べてみました


大豆製品を使った5種類の料理を食べてみました。
ソイラザニア、大豆ミートの唐揚げ、ソイチキサラダのバンバンジー風、豆乳チーズ入りサラダ、プラントベースのウニの5種類。

もう一度食べたいとは思えない、、というのが正直なところでした。
ゴメンナサイ。

ベジタリアンのあり方には2種類あると思っています。
中国の素菜のように、肉やアワビなどに似せていく方向と、そもそも肉(あるいはそれに似せたもの)を食べたいという欲求を持つこと自体がよくないという考え方のインドなどのように、全く違う植物ベースの美味しさを作り出していくという方向と。

実は、この料理を一緒に食べたのは、滋賀県から出張で東京にきていた料理家で、「Nouvelle SHOJIN(精進)」を展開する蓮渓邦枝さんでした。
コロナ禍のzoom飲み会で知り合い、共通の友人もいたことからお声がけいただき、では上京の際にこちらにご一緒しましょうということに。この日が初対面。

蓮渓邦枝さんと

蓮渓さんは、精進料理を専門にしているので、肉や魚は使いません(普段は召し上がるそうですが、仕事の時には使わないとのこと)。
でも、「野菜を使った魅力的な料理を作り、あとで振り返ってみたら、あれ、肉や魚なかったけど、なくても全くなんとも思わないくらい美味しい、肉や魚の美味しさを凌駕するくらい美味しい、そんな料理を作りたい」というお話を伺いました。

今のプラントベースの加工食品が向かうべき先はこっちであるべきではないかと私は思っています。

以前、仕事で米麺の開発についての意見を求められたことがあり、20種類以上の米麺を試食したことがありました(実は東日本大震災の当日だったので今もはっきり覚えています)。

パスタやラーメンに似せて作ろうと開発しているところの麺は、やはり「ラーメンには叶わない」とか「小麦のパスタの方がやはり美味しい」とか感じてしまうのです。自分にとってのスタンダードがすでにあるからです。

肉やチーズ、ウニに似せるというのでは、どこまで行っても「似非」でしかありません。
新たな食文化を創るくらいの意気込みで、開発をしていただきたいと思っています。

私は肉も魚もなんでも食べますが、特に家畜を育てることに伴う環境問題については気になってしまいます。
とはいえ、肉食をやめてベジタリアンになろうとまでは思えないのが正直なところ。
そして世界の多くの人が、嗜好において私と同類であろうと思います。

そんな人たちが、「肉もいいけど、この植物プロテインは別の美味しさがあるよね!今日はこっちにしよう」と選択できるような料理が生まれてくることを願っています。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事
東大法学部卒。外資系金融機関等を経て、娘の重度のアトピーをきっかけに食の世界に。

食には未来を変える力があるという信念のもと、今のライフスタイルにあった乾物や米粉の活用法を中心にレシピを開発している。
料理教室の開催、企業向けメニュー開発、研修など多数。

料理を自由に発想でき、毎日の料理が楽しくなる独自の「ピボットメソッド」を考案。個人やメニュー開発が必要な方向けのトレーニングも行っている。

著書14冊。メディア出演多数。

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